«ファイティング スピリット»の抜粋、序文、七項
アクセスがよく都合がよかった合気道道場は子供専門のスクールだった。 若い先生は私を見てビックリしたが快く招き入れてくれた。 最初の練習は思ったとおりに全くうまくいかなかった。
どれも想像以上に難しかった。
一週目は技というより技のほんの一部もうまくできなかった。 唯一できたのは昔剣道でならった立ち方だけだった。 9月に入学した子供たちの動きを見ては歯がゆい重いをするばかりだった。
2週間後マリーにこう話した。
「私は何もできないわ」
「じゃあできるようになるために何をしてるの?」 マリーは微笑んで尋ねた。
「一生懸命に頑張ってるわよ!」
「週に何回通ってるの?」
「3回」
「それじゃあそんなに上手くならないわよ。週に3回だけじゃ基本のキしか習得できないわ。それ以上になりたいなら毎日練習しないと!」
マリーの言葉は私のやる気に火をつけた。
それからフィットネスなどを一切止めて、使える時間は全て合気道の練習に費やした。
幸い道場に早く行くと誰もいなかったので好きなだけ一人で練習できた。
新年があけて週に6回練習をするようにした。 一人で2時間、さらにみんなと1時間稽古した。
しばらく続けると自分より先に入学したみんなにやっと追いついた。
その夜、カリーナがつけた稽古のあとジャケンはシャワーを浴びてアシエンダのテラスで一服していた。
「レミがソコルと話した時、何か変な感じしなかった?」 ジャケンはカリーナに尋ねた。
「レミがどうしてアノ人としゃべってたかってこと?それともその内容?」
「真剣に答えろよ」
「あなたこそ」
二人は互いに笑いあった。
「いつもと違ったのはレミがアノ人にほとんど何も聞かなかったことくらいかしらね。」
カリーナはやっと質問に答えた。
「ところで君も日本に行くの?」ジャケンは尋ねた。
「まだ決めてないけどレミの旅のプランを聞いたら行かないほうが賢明だと思ったよ。 レミは何か大きなイベントを目の前にするとものすごいエキサイトしてエネルギーの塊みたいになるからそばにいるだけで疲れるんだ。近々方法学者が来るから彼にも聞いてから決めるよ。」
方法学者のフレン チホニコフは昔から多次元の研究をしていて、彼自身も異次元に存在しているかのような変わった人だった。それでもカリーナを彼を尊敬していた。
「ねぇ、ジャケン、最近レミ変わったと思わない?」
「あぁ同感だ。以前一緒に練習したときは私にも勝てそうなスキが少しはあったけど、今では一歩も近づけないって感じだよ。 あの一ヶ月の留守の後レミの体が異常に軽くなったんだ。なんていったらいいか、近くにいてもほとんど存在を感じないくらいというか。。それなのに力だけはものすごく強くなったんだ。 人間だと思えないくらいにね。」
「人間よ!」レミが突然ジャケンの背後に立った。
「ビックリした!」
「リラックスしすぎよ!武士ならいつも覚悟を決めてなきゃ!真の侍ならタイミングよく長刀と短刀を抜いて切腹するのよ。」
「真の男ならいつも短刀は身に着けてるけど長刀は何に使うの?」
「練習中ひとの話を聞いていないってことね。」
レミがジャケンを軽く蹴ろうとした瞬間彼は膝をついて深くお礼をした。
「先生、申し訳ございません。愚かなことを申しました。」
「早く立ち上がって戦え!」 レミは彼を軽く蹴飛ばした。
「ちゃんとか言って、、、 」ジャケンはつぶやいた。
「なに?」 レミは仁王様のような怖い顔をした。
「もういい加減にしてちょうだい、お茶ができたわよ。」 カリーナはそういうといい香りのするベランダへと出て行った。
「そうね、行きましょう。」
レミはにっこり笑ってジャケンの肩に手を置いて彼の目をまっすぐ見つめた。
レミの香りをまとった風が頬を撫で、一瞬唇が近くなったせいで動揺したジャケンは、レミの温かいぬくもりにもう一歩近づこうとしたその瞬間、あっけなく一本をとられ床に倒された。
「サカエくん、いつでも覚悟しておけっていってるでしょう!あぁ まったく!」
そう言うとレミはどこかへ去っていった。彼女の後ろ姿を見ながらジャケンは、長い間思いを寄せている自分を哀れに思う一報、彼女の側にいられる幸せを感じた。
絵画: ヂューモン・アルチョム
つづきます
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