«ファイティング スピリット»の抜粋、序文、一項
画家: Andrey Poberezhnik
序文
日記から:
私、大熊座レミ、本名は竹田花子、オオガメ島の安全・戦略企画の担当顧問だ。日記の最後のページとなるこの章を書き終えたら、"未知なる世界伝説”が入っている秘密箱に鍵をかけて更に金庫にしまうつもりだ。
すべて元通りにしなければならない期日まであと一日。成功した場合、グル-プ全員に2つの選択肢が与えられる。一方は、知らない世界で数百年生きる。もう一方は不自由なしにあと数十年間地球上で生活する。私はもうすでに決めているが他の人はどうするかまだ分からない...
一項
私の運命は生まれたころから決まっていた。決められたことが何よりも嫌でとにかく自由になりたかった。何度もその運命に逆らおうとした。世の中のことがよくわかるようになった今、そんな風にいきがっていた自分を思い返すとなんとおろかだったのかと恥ずかしくなる。
自分が最も愛するものを失って初めて自由になれた気がした。その後運命に従って自分の道場を設立した。
画家: Andrey Poberezhnik
夏のある朝キッチンからコーヒーの香り。夜が明けていくとともに垣根のサンザシの木が濃紫色に輝いていた。レミはこの時間が最も好きだった。彼女はキーボードの手を止めて、いそいそとキッチンに向かった。
カリナは自分のコーヒーを手に持ち、レミに対し怒りの表情を見せた。
「何?あなたのせいで眠れなかっただけではなく、朝のコーヒーとタバコの楽しみも台無しにするつもり?」
レミは呆然とした。
「私のせいで眠れなかったですって?物音立てずに静かにパソコンと向き合ってたわ!そもそも、弟子たちに教えを書き記したらどうかとあなたが勧めたんじゃない!?やっと書く気になったのに邪魔だなんて、ひどいわ!」
「とんでもない、静かにですって!まるでハンマーか何かでキーボードをたたいているような音を立ててたじゃない!どうして私が休みたい時に限ってあなたは何かをやる気になるの?昨日だって、私はちょうど昼寝しようと思った時にあなたは鞭の練習を始めたでしょう。 元はと言えば体を休めたかった理由だってあなたが一昨日の真夜中に騒々しく護身術の練習なんかしていたからよ。ヒールで首根っこを床に押え付けられていた富士本さんは本当に気の毒。あんな叫び声が聞こえていたら寝てなんていられないわよ!なんでそんなに自分勝手なの?」
「だって最近なんだか退屈だからオサマと賭け事しようって。で、今度東京でコスプレ大会があるからその準備でもしようって思ったのよ。」
レミは息を止めて、差し指を上に向けた。
「そうよ、オサマが言い出したのよ。賭けたものはあなたが昔からずっと欲しいって言ってるものよ。練習相手になってくれるのは富士本さんくらいしかいないじゃない。もう、くだらない話は止めて、コーヒーちょうだい!」
「もうコーヒーは飲まないでちょうだい!朝も夜もよ。エネルギーが有り余っているのよ、我慢ももう限界...」
「あなたの部屋は防音設備がついてるじゃない!」
「嫌いよ!あんなところ、さびしすぎる。」
「コーヒーちょうだい!」
「あなたにあげるコーヒーはないわ!プーアール茶をどうぞ。わざわざあなたのために淹れたんだから。」
「メルシー。でも、コーヒーとクロワッサン・・喉から手が出るほど欲しいわ。。」
「レミさんって時々まるで子供みたい。昨夜、コーヒーを何杯飲んだか知ってる?」
カリナは気分よくチェリー味のタバコを吸い込んだ。
「三杯かな?」
「はいはい、コーヒー缶はほとんど空よ!一昨日空けたばっかりなのに。コーヒーは二杯まで、しかも午前だけというヂューラン先生の言葉をもう忘れたの?」
「昔の話よ!あなたって昔のことよく覚えてるわね...」
「まぁ、どうするかはあなた次第だけど先生の言った通りにした方がいいと思うわ、結局健康が一番でしょ。」
レミは大笑い。自分の紅茶を入れて、カリナの隣に座った。
「やっぱり私の本音が分かるのはあなただけね。だから、私は時々あなたを眠らせたくなるかも。」
絵画: ヂューモン・アルチョム
つづきます
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